骨折映画館〈死闘編〉〈平成頂上作戦〉
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HPより
【解説と背景】
ある日、イベントの最中に鎖骨を折ってしまった高円寺円盤の店主、田口史人が、家で「鳥みたい格好でじっとしている」二ヶ月ほどの静養を余儀なくされた際、肩を動かせず、レコードもかけられない中、映画だったら観られると思い、集中的に日本映画の名画を鑑賞した。
音楽ライターとしてはキャリアあったものの、実は四〇代になっても全く映画を見ていなかった田口。黒澤明も小津安二郎も全く観ていない。今、映画を観ようと思ったら、何を見るのだって、最初から、内容はおろか、見所、その評価まで情報が入ってきてしまい、まっさらな気持ちで作品に向かうことはとても難しい。それにネット上にはファン、マニアの発言も溢れかえっていて、門外漢がなかなか入っていけない雰囲気もあります。もちろんそれは映画に限ったことではありませんが、音楽ではもう情報を持ってしまっているからできないけれども、「せっかく知らない」のだから、前情報をシャットアウトして、「名画」と言われているものを片っ端から観て、自分はいったい何を感じるのだろうか、を記録していくことにしました。選んだ基準は「キネマ旬報」の年間ベスト10入りしていたものと、興行収入の高かったヒット作。サイレントから近作まで無作為に観まくりました。
観たのは邦画限定です。というのも日本のものなら、同じ文化圏で生きてきたのですから、海外映画よりも、より情報などなくても感じられることは多く、繊細な部分に触れ得ると思うからです。
そうして綴った「感想」を、日本映画マニアの友人、かっぱ橋のジャズ系ライヴハウス、なってるハウスの店主(当時)小林ヤスタカさんに送り、その「感想の感想」を返信してもらった往復書簡を始めました。
そのやりとりが面白かったので、のちにプリントアウト&ホチキス留の簡単な冊子二冊にしたところ、大好評でそれぞれ数百冊が一気に売れてしまいました。
今回、その二冊の冊子を書籍としてまとめることになったのですが、当初は双方の興味の志向ゆえでしょうか昭和の映画がほとんどで、これでは現在につながらないから、書籍化に際して平成映画に特化したものを追加収録しようと考え、始めたのですが、小林氏が平成映画が嫌いすぎてリタイヤ(笑)。仕方なく、平成以降の映画や自主制作映画を満遍なく観まくっている山形の自主映画イベント主催者、今野オサムさんに相方をバトンタッチして仕上げたのがこの本。
結果的に日本名画入門本であると同時に、平成映画編では、「平成映画とはなんなのか」に迫り「平成日本映画は要介護表現である」という結論に達します。映画だけでなく、そして個人でなくとも、すべての表現は成長し、そして老いていくということを導き出す一冊でもあります。
この本のキャッチフレーズはこれ
「映画観るのに情報は無用。己の経験と感覚で物語に浸ればよい!」
そう、表現にはこうしてぶつかるだけでいいんです、情報も共感も忖度もいらないんです。
ぶつかって、物語や登場人物に、笑ったり、怒ったり、同情したり、涙したり…
そんな表現に触れる人全てに読んでほしい「当たり前」のススメです!
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